知的資産経営報告書とは

知的資産経営報告書とは、自社の知的資産や知的資産経営を開示するために作成する報告書をいいます。

知的資産経営報告書を作成するには多くの時間と手間がかかるため、「知的資産経営報告書を作成すること」が目的になってしまいがちです。

しかし、知的資産経営報告書を作成することが目的ではありません。

「誰に」「何のために」知的資産経営報告書を開示するのか?

これを一番はじめに考えなければなりません。つまり知的資産経営報告書を作成する目的を考えるのです。

例えば・・・

・金融機関に、融資を受ける際の判断資料として知的資産経営報告書を作成する

・求職者に、自社に対する正確な認識を持ってもらって応募してもらうために知的資産経営報告書を作成する

・従業員に、教育の一環として自社をきちんと知ってもらうために知的資産経営報告書を作成する

などです。

こうした事例を考えればわかりますが、知的資産経営報告書の開示対象者と開示目的に合わせて、記載する内容や記載の仕方が変わってきます。

知的資産経営報告書は必ず必要なのか?

「誰に」「何のために」自社の知的資産や知的資産経営を開示したいのか?

この問いにきちんと答えると、知的資産経営報告書を作成する必要はない、という場合も出てきます。

それは、「知的資産経営報告書」というものが自社の知的資産や知的資産経営を開示するツールの1つにすぎないからです。

この人に、この目的で、自社の知的資産や知的資産経営を開示するには、知的資産経営報告書よりもホームページやチラシや名刺など他の媒体の方がいい、という場合だって当然あります。また知的資産経営報告書を作成するとしても、記載内容や記載方法が異なってきます。

ここで間違えてはいけないのが、仮に知的資産経営報告書を作成しなくても、開示対象者と開示目的に合わせて自社の知的資産や知的資産経営を開示する必要はあるということです。

誰に、何のために、自社の何を伝えたいのか?
そのために一番良いものは知的資産経営報告書であるのか?他のものであるのか?
こういう問題であって、知的資産経営報告書ありきでもなければ、開示の必要性がないわけでもありません。

本サイトでも知的資産経営報告書の活用方法について下記で記載しておりますので、御社が知的資産経営報告書を活用したいと思われましたら是非作成してみて下さい。その際、私がサポートさせていただくことも可能です。お気軽にお問い合わせ下さい。

知的資産・知的資産経営の見える化と知的資産経営報告書の違い

本サイトでも何度か書かせていただいておりますが・・・
「知的資産・知的資産経営の見える化」と「知的資産経営報告書の作成・開示」は異なるものです。

知的資産・知的資産経営の見える化は、知的資産や知的資産経営の整理をすることです。

つまり、企業内にどんな知的資産があり、そのうちのどの知的資産と知的資産がどのように関連しており、その結果どの商品サービスを提供できているのかをストーリーとして把握することなので、どの企業も必ず行う必要があります。そして知的資産・知的資産経営を見える化したものをそのまま開示することはないと考えます。

これに対して知的資産経営報告書は、誰にどんな目的で開示したいのか?ということを明確にした上で、その開示対象者と開示目的には知的資産経営報告書が有用であるという判断がなされた時に初めて作成され、開示されるものです。

当事務所は「知的資産」という用語がわかりにくいことから知的資産のことを「裏方資産」という言葉を使って説明しています。そのため、この「裏方・黒子」という言葉を使って「知的資産や知的資産経営の見える化」と「知的資産経営報告書の作成・開示」の違いを説明するならばこのようになります。

・「知的資産や知的資産経営の見える化」は、舞台ごとの主演の確認・主演を支える裏方さんや黒子さんの人数把握と役割分担の整理・主演と裏方さんとの連携プレーの確認

・「知的資産経営報告書の作成・開示」は、主演・主演を支える裏方さんち黒子さん・主演と裏方さんとの連携プレーの紹介

こんなイメージで考えていただくと、「見える化」で記載する内容と「開示」で記載する内容が異なってくることがおわかりいただけると思います。

また、同じ「開示」であっても、監督に開示する場合、一般視聴者に開示する場合、マスメディアに開示する場合などによって開示内容や開示方法が異なってくることもおわかりいただけると思います。

知的資産経営報告書の活用方法(内部マネジメントツール)

知的資産経営報告書を作成するかしないかを決めるにあたり、知的資産経営報告書がどんなことに使えるのか、という知的資産経営報告書の活用方法をご説明させていただきます。

知的資産経営報告書は、内部マネジメントツールとして活用することができます。

経営者は経営環境を分析したり、様々な情報を入手したりして、常に経営方針や経営戦略を練っています。

しかし、頭の中で練っていると、矛盾したことを考えていたり、無謀な計画を立ててしまったり、堂々巡りになってしまったりなどの問題が出てくる可能性があります。

そこで経営者の頭の整理のために知的資産経営報告書を作成することが有用です。

目に見える報告書にまとめる過程で経営者はいろいろなことに気づきます。自社の商品サービスの良し悪し、商品サービスにつながっている技術やノウハウ、1人1人の従業員のスキルや日々の業務、他社との違いなどに気づくのです。

例えば、従業員のスキルやノウハウを活かした人事ができるようになります。

また、自社の競争力の源泉を把握してさらに活かすことができるようになります。

そして同業他社にはない強みを明確にできてより強い会社にすることができます。

このように、経営者(経営幹部・従業員)が見るための、経営者の頭の整理、従業員の配置の見直し、自社の強みの整理といった内部マネジメントを目的とした知的資産経営報告書を作成することで、企業の強い基盤づくりに活用することができるのです。

知的資産経営報告書の活用方法(外部コミュニケーションツール)

企業は、日々、様々な人や企業と接しています。また、見込客や将来就職したいと考えている人まで考えると、企業と関わりのある人や企業は無限の広がりを持っています。

しかし、1人1人、1社1社に対して自社のことを丁寧に解説することはできません。

会社案内やホームページではダメなのか?
そんなお声が聞こえてきます。

いいえ、決して会社案内やホームページを否定しているわけではありません。
もちろん、こうした従来のツールも非常に有用なものです。

ただ、既存の会社案内と知的資産経営報告書の決定的な違いは・・・
「誰に」「何のために」「自社のどんな情報を」「どのような形で」開示しているかを分けているかいないかです。

既存のパンフレットを「取引先用」「金融機関用」「求職者用」「株主用」「見込客用」などに分けている企業はほとんどないと思います。ホームページに至っては上記のうち誰かにしか対象にできませんよね?

そこで知的資産経営報告書が非常に有用なのです。
知的資産経営報告書は、「誰に」「何のために」開示するのかにより、記載内容も記載方法も変えて作成します。

つまり、自社の目的に応じた人に、それに見合った内容を記載した知的資産経営報告書を渡せるのです。

知的資産経営報告書は、通常、既存の会社案内よりも非常に細かいところまで分析を行いますし、論理的一貫性を徹底しますし、決算書の数字に出てこない知的資産だけどできる限り数字にこだわりますので、信憑性の高い報告書となります。

作成した知的資産経営報告書の信憑性が高いから信頼していただける。その結果、安心感を持って取引していただけたり、入社を希望してもらえたり、金融機関から良い評価をしていただけたりするのです。

このように知的資産経営報告書は、自社が望む外部とのコミュニケーションツールとして活用することができるのです。

知的資産経営報告書と営業秘密

誰かに対して、ある目的で自社の知的資産・知的資産経営を発信するために知的資産経営報告書を作成すると仮定します。

その際、営業秘密の取り扱いには十分に注意してください。

経営者が知的資産や知的資産経営の「見える化」を行う段階では、原価率、人件費などの露骨な数字を出したり、ノウハウの中味や変遷などの営業秘密をさらけ出すことも大切です。逆に、それ位すべてをさらけ出さないと、自社の知的資産や知的資産経営を洗い出すことは難しいです。

しかし、知的資産経営報告書は「開示」するものです。誰に何のために開示するのかによって開示できる内容が異なってきます。

例えば、顧客に対して、自社の将来性や自社製品への信頼をもってもらうために知的資産経営報告書を作成するとします。

自社は仕入先を仕入価格だけでは選ばず、仕入先選定の10項目を定めてそれに従って仕入先を選定します。その結果、仕入先と良好な関係を築けており、仕入先から他社より安く仕入れることができており、原価率を2割に抑えることができているとします。

この場合、取引先や顧客に対して、自社の強みとして「原価率2割」と書くことはできません。原価率2割ならもっと安く売って欲しいと言われてしまったら、せっかくの企業努力が水の泡になってしまうからです。

しかし、金融機関から融資を受ける際に添付する知的資産経営報告書であれば、原価率2割というのは積極的に記載すべき事項です。営業利益率が高くなるため、金融機関から良い評価を得られるからです。(知的資産経営報告書と融資については別の場所でもう少し細かく記載しようと思います。)

ノウハウをはじめとする営業秘密にしても、誰に対してだったらどこまで記載したらいいのか、という点は常に意識しないといけないことです。

知的資産経営報告書を作成する際には、知的資産経営報告書を読む相手がそれを読んで目的どおりの想いを描いてくれるか?ということを意識する一方で、自社の命取りとなる営業秘密は具体的に記載しないという配慮も必要です。

知的資産経営報告書に記載する事項

中小企業基盤整備機構さんも知的資産経営報告書の作成マニュアルを出されていますし、インターネットをはじめとして知的資産経営報告書の作成方法に関する情報はたくさんあります。

しかし、知的資産経営報告書は開示対象者に開示目的に合わせて作成するものです。そのため、開示対象者と開示目的に照らし合わせて必要であれば各種マニュアルに書かれていなくても記載する、不要あるいは記載しない方がよいことであればマニュアルに書いてあっても記載しない、という判断が必要になってきます。

また、同じ項目を記載するにしても、開示対象者と開示目的によって記載する内容の濃さや記載方法も変わってきます。開示対象者が開示目的のために知りたい要素は何か?その対象者にとって読みやすい形式か?その対象者にその情報をそこまで記載しても問題ないのか?など、知的資産経営報告書の作成企業側の視点と読み手の視点双方から考えて作成しなければなりません。

このことを踏まえ、多くの知的資産経営報告書に記載されている内容は下記のとおりです。

1.はじめに
2.企業概要
3.企業の歴史
4.商品サービス
5.現在の価値創造ストーリー
6.将来への価値創造ストーリー
7.あとがき
8.知的資産経営報告書について

知的資産経営報告書に記載する事項~はじめに

知的資産経営報告書の「はじめに」の部分には、多くの場合、社長や代表の挨拶が書かれています。社長や代表は会社の顔なので、社長の写真とともに社長の挨拶文を掲載しています。

知的資産経営報告書に記載する事項~企業概要

知的資産経営報告書の企業概要には例えば以下のことを記載します。

1.会社名
2.所在地
3.連絡先
4.創業時期
5.資本金
6.従業員数
7.URL
8.経営理念・社是など

ご覧のとおり、この部分は通常の会社案内に書かれているような内容です。

知的資産経営報告書に記載する事項~企業の歴史

会社案内を拝見すると、何年に創業、何年に工場建設、何年に本社移転などを一覧で書かれているものがあります。

知的資産経営報告書に記載する企業の歴史は、このような情報にもっと肉付けをしていきます。

・創業者がどんな環境で、どんな思いで、どんなことを考えて、どんな事業で創業したのか?
・何年に誰が、何のために、どんな工場を建設したのか?
・何年に誰が、どういう経緯で本社移転をしたのか?
などを1つ1つ掘り起こして記載していくのです。

そうすると、なぜ自社が創業当初はこの事業を行っていたのに今この事業を行っているのか、時代がどう変わり、自社がそれにどう立ち向かってきたのかなど、自社と自社を取り巻く環境の変化が手に取るようにわかってきます。

例えば、環境の変化に早く対応できる会社であることがわかったとしたら、
・なぜ早く察知でき、早く方向性を定めることができ、早く実行できたのか?
・もしもその時に社内が一体化していたとするならば、そのような社風をどう形成していたのか?
などを1つずつ掘り起こしていくと、様々な知的資産が隠れていることがわかってきます。

知的資産経営報告書に記載する事項~商品サービス

知的資産経営報告書は原則として商品サービスのパンフレットではありません。
それゆえ、商品サービスや型番だけを並べるだけでは足りません。

知的資産経営報告書に商品サービスを記載する際は、商品サービスのストーリーを語って下さい。
・商品サービスにはどんな強みがあるのか?
・その強みはどのように形成されたのか?
・どんな過程を経て商品サービスが開発されたのか?
など、商品サービスの生い立ちの記を語って下さい。

商品サービスの生い立ちの記を語るときに、
・1人1人の社員の人的資産
・社員の団結力
・社風
などの知的資産が見えてきます。

知的資産経営報告書に記載する事項~現在の価値創造ストーリー

価値創造ストーリーは知的資産経営報告書の肝ともいえる部分になります。
特に書き方が定まっているわけではありませんが、当事務所が知的資産経営報告書の作成支援をする際は別のページでご紹介している、中森孝文龍谷大学政策学部教授が提唱された方法で記載しています。

このページでご紹介した時はタイプⅠ~タイプⅣまで分析することをご紹介しましたが、作成する知的資産経営報告書の作成目的と開示対象者によってここまでの分析を行うか否かは変わってきます。

当事務所が知的資産経営報告書の現在の価値創造ストーリーのところに必ず記載しているのは、経営理念~商品サービスまでの流れです。
・経営理念は何か?
・どんな努力・工夫をしているか?
・どんな強みがあるのか?
・商品サービスは何か?

そしてこれが一番大切な部分なのですが・・・
これらが相互にどうつながっているのか?
です。

相互につながらないところが出てきたらどうするのか?
それはまだ知的資産が隠れている証拠です。
もっともっと会社を見つめて下さい。必ず何か見つかるはずです。

そして同時に、会社の課題も見えてきます。
臭いものには蓋をしたい気持ちはよくわかりますが、きちんと見つめることで将来の会社がガラリと変わるチャンスでもあります。
しっかりと課題の克服方法を考えてみて下さい。その際、必ず何か知的資産を使えないのか?という視点も忘れずにして下さい。

知的資産経営報告書に記載する事項~将来の価値創造ストーリー

知的資産経営報告書に現在の価値創造ストーリーを書いたら、次に将来の価値創造ストーリーを記載します。
将来の価値創造ストーリーとは、3年後とか5年後に会社がどうなっているのか?というストーリーです。

当事務所が知的資産経営報告書を作成支援する際は、現在の価値創造ストーリーと同様、将来の経営理念~商品サービスの流れを記載しています。

現在の価値創造ストーリーを記載した時、様々な課題もあぶりだされているはずです。
将来の価値創造ストーリーというのは、どの課題を、いつ、どのように克服し、それにより会社がどのように変わっているのかを見える化したストーリーになります。

これを明確に記載することで、会社の将来性を論理的に示すことができます。

知的資産経営報告書に記載する事項~あとがき・知的資産経営報告書について

知的資産経営報告書の最後には「あとがき」や「知的資産経営報告書について」を記載するのが一般的です。
最後に会社概要をもってきているケースもあります。このあたりは自由です。

あとがきでは、簡単なあいさつを述べて、最後に「知的資産経営報告書について」を記載するケースもあれば、「あとがき」を「知的資産経営報告書について」に代えるケースもあります。

「知的資産経営報告書について」には知的資産経営報告書についての簡単な説明を記載します。

知的資産経営報告書、特に価値創造ストーリーを記載する際の注意事項

知的資産経営報告書を作成する際に一番苦労するのがこの価値創造ストーリーの部分になります。
投げ出したくなることもあるかもしれません。

・どうして?この強みがあるなら何か努力・工夫してるでしょ?何かないの?
・これだけ努力・工夫していることって何かにつながっていないの?
・この商品サービスって、これだけ売上を上げているんだから、もっと他に強みがあるんじゃないの?

こういうことを1つ1つ掘り下げていき、論理的につながるストーリーにしていくわけですから、骨が折れるのは当然です。

そんなとき、悪魔の声が聞こえてきます。「もう話作ってしまえ~」と。
気持ちは痛いほどよくわかります。

しかしそれをやってしまったらまったく意味がありません。
苦労して引っ張り出した知的資産にこそ価値があるのです。
これに気付くからこそ知的資産経営報告書を作成する意味があるともいえるのです。
だから、つらければつらいほど、会社にとって良い発見があり、将来の発展があると考えて探してみて下さい。

知的資産経営報告書を信憑性の高いものにするための注意事項

知的資産経営報告書は自社の価値を伝えるものであるため、通常の会社案内にはあまり書かれていない「自慢話」を記載します。
つまり、自社で自社の自慢話を記載するわけですから、単純に
・わが社にはこんなにすごい商品サービスがあるんだ
・わが社にはこんな強みがあるんだ
・わが社はこんなに努力しているんだ
という言葉だけ並べられても、他の方が読まれたときになかなか信用してもらえません。

では、どうしたら自社の知的資産・知的資産経営・将来性を信用してもらえるのか?
それは、数値として示すことです。

・わが社は金属加工の技術が高い ⇒ わが社は○○という金属加工について、○○ミクロンの精度を出せる
・わが社は熟練した職人がたくさんいる ⇒ わが社は勤続15年以上の職人が3名、○○の資格を持った職人が5名いる 
・わが社は短納期に対応できる ⇒ わが社は最短1日で○○という加工ができる

こんな風に数値で示せば、客観的に信用できる知的資産経営報告書になります。
この数値のことをKPIといいます。KPIをここで説明すると長くなるので別途記載しますが、どんな数値が書いてあったら読み手が信じてくれるだろう?という視点で考えてみて下さい。

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