知的資産の見える化とは

知的資産の見える化とは、自社の知的資産を整理してわかりやすく伝えられるということです。この「見える化」と知的資産経営の第三プロセスにいう「開示」とは似ていますが異なるものです。

「開示」というのは、例えば求職者に自社をPRしたいとか、新規の取引先に自社の安定性をわかってもらいたいとか、株主に自社の将来性をアピールしたいなど、特定の対象者に特定の目的をもって戦略的に開示することをいいます。

これに対して「見える化」というのは、知的資産経営の第一プロセスの「認識」あるいは「認識したものを整理する」というものです。

自社の知的資産を整理してわかりやすく伝えることは、新規顧客の開拓や自社のPRに非常に役立ちます。

例えば、製造業のA社が「うちの加工の技術はすごいから依頼してください」と言ったとします。しかし、A社の技術が具体的にどのような点で優れているのかさっぱりわかりません。

例えば・・・
・何の加工をしているのか?(金属加工?木材加工?など)
・どのような技術が優れているのか?(切削技術?接合加工技術?めっき加工技術?など)
・どんな単位なのか?(ミリ?ミクロン?など)
・何か受賞歴があるのか?
・シェア率はどうなのか?(国内何%、国内1位など)
・早さはどうなのか?
・熟練の職人さんが何人いるのか?
・保有している機械の種類や台数は?

こんな例を挙げることができます。もちろんこれ以外にもたくさんあります。

このように自社の技術内容およびそれを提供できる確固たる理由を説明できないと、せっかくのPRも無駄に終わってしまいます。それどころか、最悪な場合、むなしい自慢話という評価をされる可能性さえあるのです。

知的資産の「見える化」で自社の強みを上手に説明してください。ただし企業秘密まで見せてしまわないように気を付ける必要があります。

知的資産の整理方法

自社にどんな知的資産があるのかを整理する際に、自社を分析する必要があります。自社を分析する方法は多岐にわたりますが、本サイトでは以下の7つの方法を取り上げます。

1.自社の歴史の整理
2.PEST分析
3.SWOT分析
4.クロスSWOT分析
5.VRIO分析
6.5フォース分析
7.セグメント分析

知的資産の整理~自社の歴史の整理

企業には老舗企業から創業したての企業までたくさんあります。

まず、創業したての企業の場合は、創業者自身の歴史を振り返ります。

1.学生の時にどんなことを学んだか?
2.どんな企業で働き、どんな経験を積んできたのか?
3.どんな資格を持っているのか?
4.どんな人脈があるのか?
5.どんな想いでその分野で起業したのか?
などを振り返って整理することで、新規顧客開拓などを行いやすくなります。

次に、老舗企業の場合は、創業当時から現在までの歴史を振り返ります。

1.創業当初の商品サービスは何か?
2.なぜその時代にその商品サービスを提供していたのか?
3.なぜその時代にその商品サービスを提供できていたのか?
4.現在まで続いている商品サービスは何か?
5.現在の商品サービスは何か?
6.経営理念はいつからどんなものがあるのか?
7.ずっと続いてきている強みは何か?
8.どんな企業努力をしてきたのか?
などを振り返って整理することで、自社の変遷や思わぬ知的資産に気付くことがあります。

知的資産の整理~PEST分析

PEST分析とは、企業が事業活動を行う上で影響を及ぼしている外部環境や、各々の外部環境が今後どのような影響を及ぼしていくのかを把握するために行う分析手法です。

PESTとは、政治的(P=political)、経済的(E=economic)、社会的(S=social※)、技術的(T=technological)の頭文字を取った用語です。

1.政治的・・・規制緩和や規制強化、新法の制定、現行法の改正、税制改正、裁判所の判決の動向など

2.経済的・・・景気、物価、経済成長率、国民総生産(GNP)、国民総所得(GNI)、金利、株価、為替の動向など

3.社会的・・・人口推移、出生率、流行、自然環境、二酸化炭素排出率、ライフスタイル、宗教、犯罪発生率、教育水準など

4.技術的・・・特許出願数の推移、技術の進歩、新技術普及率など

PEST分析を厳密に行うとどれに分類するのか迷う要因も出てきます。しかしPEST分析を行う目的は、自社の知的資産あるいは知的資産の元となっている要因を整理することです。PESTに分けているのは、知的資産や知的資産の元を見つけやすくするためだけなので、深く悩まずに思いついたものをとにかく書き出していくことが大切です。

知的資産の整理~SWOT分析

SWOT分析とは、企業が事業活動を行う上でプラスに働いている(働く)外部環境、マイナスに働いている(働く)外部環境、企業内部の強み、弱みを把握するために行う分析手法です。

SWOTとは、強み (S=Strengths)、弱み (W=Weaknesses)、機会 (O=Opportunities)、脅威 (T=Threats) の頭文字を取った用語です。

1.強みと弱み・・・商品サービス、企業の規模、立地、原材料、設備、ブランド、企業風土、価格など

2.機会と脅威・・・流行、法制度、経済状況、人口の推移、環境の変化、競合他社の動向など

2.機会と脅威については、PEST分析で書き出したPESTの要因を、自社に機会をもたらしている(もたらす)要因と自社に脅威をもたらしている(もたらす)要因とに整理するとともに、競合他社の動きまで踏まえて書き出すことが大切です。

知的資産の整理~クロスSWOT分析

クロスSWOT分析とは、SWOT分析で書き出したSWOTの各要因を掛け合わせて、現状の経営課題を抽出するために行う分析手法です。クロスSWOT分析では、内部環境 × 外部環境で4つに分けます。

1.強み × 機会・・・自社の強みで追い風が吹いているもの。強みと機会を活かしてさらに伸ばしていきます。

2.強み × 脅威・・・自社の強みだけど向かい風が吹いているもの。強みを活かして脅威に対抗したり、脅威からの脱却をはかります。

3.弱み × 機会・・・自社の弱みだけど追い風が吹いているもの。弱みを克服したり、弱みを裏から見た強みを活かしたり、協力者によって弱みを補完したりして、機会を活用します。

4.弱み × 脅威・・・自社の弱みで向かい風が吹いているもの。弱みを克服したり補完したりして脅威の影響を最小限に抑えるか、これによって受けるダメージは諦めて他で挽回します。

知的資産の整理~VRIO分析

VRIO分析とは、企業の競争優位性を判断するために、企業が有している経営資源を分析する手法です。

VRIOとは、価値(V=Value)、希少性(R=Rareness)、模倣可能性(I=Imitability)、組織(O=Organization)の頭文字を取った用語です。

1.価値・・・市場において自社が有している経営資源に価値があるか否か。価値がなければ顧客が創造できない可能性があります。

2.希少性・・・市場において自社が有している経営資源に希少性があるか否か。希少性が薄ければ、競合他社が容易に参入してしまう可能性があります。

3.模倣可能性・・・市場において自社が有している経営資源が真似されやすいか否か。真似されやすい経営資源だと、現在は自社が優位に立っていても、競合他社に真似されて追いつかれてしまう可能性があります。

4.組織体制・・・自社が有している経営資源を、有効に、最大限活用できる組織体制となっているか否か。経営資源を活かせる組織体制が整っていなければ、その経営資源の本来の効果は発揮できず、宝の持ち腐れとなってしまう可能性があります。

知的資産の整理~5フォース分析

5フォース分析(ファイブフォース分析)とは、業界における収益を判断するために、業界を5つの要因について分析する手法です。

競合者間の敵対関係、新規参入の脅威、代替商品サービスの脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力の5つの要因を分析します。この5つの要因が業界に対して強い影響力を与えるのであれば脅威、そこまで影響力を与えないのであれば機会と判断します。

1.競合者間の敵対関係・・・競合者の数、規制の有無など、業界内の敵対関係の強さを決定する要因。この競合者管の敵対関係という要因を作り上げる要因が、以下2~5で記載する4つの要因です。

2.新規参入の脅威・・・差別化、代替にかかるコスト、法制度など、参入障壁の高さを決定する要因。参入障壁が高ければ独占あるいは寡占状態を維持しやすいが、参入障壁が低ければ業界内で競争が激しくなります。

3.代替商品サービスの脅威・・・マッチからライター、フィルムカメラからデジタルカメラなど、既存の商品サービスよりも利便性が高かったり、低価格であったりする代替品が出てくる要因。代替商品サービスは、既存商品の競合他社ではなかった異業種から出てくることが多く、既存商品サービスから代替品への切り替えが起こり、新しい業界内で競争が激しくなる可能性があります。

4.買い手の交渉力・・・文具、日用品、家電製品など差別化を図りづらい商品サービスや、供給過多の商品サービスや、買い手が製造コストを把握している場合など、買い手の交渉力が強くなる要因。買い手の交渉力が強くなると、価格競争に陥りやすくなり、厳しい競争を強いられる可能性があります。

5.売り手の交渉力・・・ニッチな商品サービス、必需品、限定品、ブランド力など買い手よりも売り手が強くなる要因や、仕入れ値をほぼ自由に決定できるなど、仕入先よりも商品サービスの売り手が強くなる要因。売り手の交渉力が強くなると、価格競争を強いられる可能性は減りますが、ニッチ商品などにおいては特に原材料の値上げなどが生じる可能性があります。

知的資産の整理~セグメント分析

セグメント分析は、中森孝文龍谷大学政策学部教授が提唱された分析方法で、企業の事業活動を「経営理念」「マネジメント」「技術・ノウハウ・ネットワーク」「商品・サービス」「業績」のセグメントに分けて記載し、各知的資産のつながりをストーリーとして捉える分析手法です。

1.経営理念・・・経営理念、社是、行動指針など、経営者の想いや経営姿勢に関わるものです。

2.マネジメント・・・人材育成システム、社風づくり、仕組みづくりなど、社内におけるマネジメントに関わるもの、ネットワーク構築など社外との関係づくりにかかわるものです。

3.技術・ノウハウ・ネットワーク・・・技術のレベルの高さ、ノウハウの希少性、ネットワーク力など、企業の強みにかかわるものです。

4.商品・サービス・・・具体的な商品サービスのシェアや性能など、商品サービスにかかわるものです。

5.業績・・・こうした企業活動の結果となっている業績を表すものです。

例えば、A社の経営理念は「企業活動を通じて明るい社会づくりを目指す」で、これを実現するために社員教育では特にコミュニケーションスキルの向上に力を入れています。その結果、新入社員もすぐになじめてわからないことを聞きやすい社風で、顧客とのネットワークも良好です。こうした強みを活かして生活雑貨の通信販売を行っており、売上が年間3億円となっています。

このような感じで経営理念~業績までをストーリーとして捉える手法です。

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